最初の告発が金沢地検に提出されたのが、2010年12月。 同様趣旨の2つめの告発が名古屋高検に提出されたのが、2011年12月であるから、最初の告発が為されてから1年半近くになろうか。

いずれの告発状も受理されていると聞くので、告発を受けたのを端緒として検察官は捜査を開始し、現在も捜査継続中である、ということになるのだろう。

随分と時間が要るようだが、刑事訴追を独占する検察が、告発事案に判断を示さず処置をしないということはまさか無いのだろうから、いつの日かは検察の処置が示されるものだろうか。

小泉町長の代理人弁護士らが報告したという、2011年2月21日の志賀町議会全員協議会では、「今後は司法の場に判断を委ねたい」として田中正文議長は同協議会を終えている(北国新聞他)。

「卒業証書は偽造ではないか?」と、町長の学歴に疑問を持つ志賀町民も、「間違いなく卒業している」「百二十パーセント不起訴処分になると信じている」と言う小泉勝町長当人も、この問題に些かの関心を持つ私のようなその他の人間も、公の判断である検察の処置を鶴首して待っていることになる。

この問題の本質は、小泉勝町長が公にしていた「米国ウッドジュニアカレッジ卒業」とする学歴の真偽であり、当該米国短大を果たして「卒業しているのか?、いないのか?」という単純な話である。

「学位取得・卒業」(短大・大学では同義語になろう)の有無は、本人の教育記録である「成績証明書(Transcript)」により確認されることになる。

提示された本人の成績証明書には授与された学位についての記載は無く、成績証明書の内容を検証すると、ウッド短大(Wood Junior College)が授与していた2つの短期大学士学位(Associate)である、「Associate of Arts(短期大学士、一般教養・人文科学)」及び「Associate of Applied Science(同ー応用科学)」のいずれの学位取得要件をも満たしていないことが解る。(

小泉町長が所持する、同短大のものと言う卒業証書(学位記)の学位は、「Associate of Applied Arts(短期大学士ー応用美術)」というものであるが、当時のウッド短大のカタログ(短大要覧)にはそのような学位は同校には存在せず、当人の成績証明書にも当該学位に関連する学科が見られないのは以前にも述べた通りである。

示された事実からは、「間違いなく卒業している」と小泉町長がするのは、間違いである可能性が高いことになってしまう。

小泉町長の保有する卒業証書(学位記)は真正なものではない可能性が高いということになるが、仮に偽造されたものだとすれば、学位名は本来「Associate of Applied Science」か「Associate of Arts」とすべきところを、「Associate of Applied Arts」と、間違えてしまった可能性が考えられようか。

小泉町長の卒業証書にサインのあるBarbara Crawford女史の役職名も、「Dean(学部長)」と小泉町長の卒業証書ではなっているのだが、短大カタログや卒業式プログラム等での同女史の役職名は「Vice President for Academic Affairs(副学長)」であり、”Dean”とした同女史の役職名というのは見当たらない。

正式役職名が違っているというのもやはり不自然なことであり、これもディプロマ(学位記)偽造のさいの”粗漏さ”の可能性があるだろうか。

或いは、米国では編入は普通にあるので、例えば、小泉町長はウッド短大入学前にコミュニティ・カレッジ等何処かの学校で、応用美術関係の十分な学科を履修してのちウッド短大に編入し、両校間に特別な協定などがあって、ウッド短大名で応用美術の短期大学士学位が発行された等、若干不自然だが、普通では考えられないような特別な事情があった可能性も考えられるようにも思うが、小泉町長にそのような別の学歴があったという説明も聞かない。

ウッド短大が非公式に留学生への”お土産”のような形で学位記を発給したことも考えられるかも知れないが、そうゆうものでは真正な学位・卒業とはなるまいし。

小泉町長の代理人という國田武二郎弁護士のあすなろ法律事務所()が、「卒業したことは事実であり」「本調査結果によって、小泉氏が学歴を詐称した事実がないことが明らかになった。」とする報告書()を提出しているわけだが、同報告書中では、「(3)卒業するためには、合計64セメスター単位を終了し、成績評価点の累加平均2.00(C)を取らなければならない」としているのだが、出典根拠が不明であり、必修科目が無い学位というのは奇妙である。

調査を依頼したというアメリカの大手弁護士事務所のロビン・モリス氏(Robyn Morris女史は2011年弁護士会-N.Y.Bar Association-登録であるから、新進気鋭の弁護士となるだろうか。)はじめ、報告書では少なくとも7名の日米弁護士が加わりながら、誰も学位取得要件での必修科目や、応用美術学位そのもののウッド短大での有無について疑問を持たなかったとするのは些か無理があるから、敢えてこのように卒業の学位取得要件を作り上げたという事であろう。

卒業証書や卒業式への参列、まして記念アルバムなどが学位取得・卒業の証明根拠とはならないことは以前記述の通りであり、本人の成績証明書の内容の検証からは全く相反する事実が窺える。

日米の複数の弁護士がこれらの事実を誰も、知らない、調べない、気が付かない、ということは、些か考え難いことである。

あすなろ法律事務所が報告書で、「卒業したことは事実」「学歴を詐称した事実がないことが明らかになった。」とするのは、意図して積極的に虚偽を示したものと考えられようか。

”失敗だった”と言われる日本版JD政策に乗って法科大学院を新設し、司法試験合格者の低迷に頭を痛めている大学も世には多いようだが、弁護士の絶対数は近年増えているのだといい、昨今は競争が厳しいと聞くから、報告書に虚偽を記載するくらいのことは珍しくも無いのかも知れないが、あまりに事実と懸け離れた虚偽を並べるというのでは、事案の適正な解決を妨げ、却って依頼主を不利な状況に追い込みかねず、ひいては”弁護士いらね”という社会風潮を弁護士自らが招いてしまう虞があるのではあるまいか。(参考統計

小泉町長は、”自らの政治生命”が懸かっている事と思うだろうから、不起訴処分を得るべく、ヤメ検弁護士への依頼をはじめ、色々と手を尽くしているのだろうが、仮に此の侭この問題が”有耶無耶”に終るようなことにでも若しなれば、志賀町の将来に永く暗い影をおとすことになるのではあるまいか。

短大卒業が町長に必須の要件というわけでなし、米短大を卒業していようがいまいが、それを問題とする町民はいないだろうが、学歴を詐称し町民を騙していたとすれば、これは民主主義のイロハのルール違反であるから騒がれる。

短大などの高等教育機関は、専攻も履修学科の選択も自ら管理するものである。 まさか全て秘書に任せていたわけでもあるまいから、”何の学位コースを勉強したのかはわからないが、卒業したのだけは確かである”というのは無いだろう。

人の信頼を得るためには、正直にありの儘に話すという姿勢が欠かせないものであるが、どうも欠けているようだ。 町長が自らの学歴の疑惑について説明をすることもせず、誤魔化そう騙そうとするようでは、町の、とくに若い人が可哀想であろう。

いやしくも公選された町長というのであれば、町民の痛みに思いを馳せるべきではないのか。

それにしても、短大要覧にも記載の無い短大に存在しない学位を、いったいどうやって取得したのだろうか?