この大学の対応がまた解らない。

ニセ博士号を使用した大学教授のことが新聞やTVで取り上げられ、社会で騒がれるようになると、国立大学でも渋々ながら重い腰を上げて対応措置をとるが、私立大学では週刊誌沙汰になってようやく事の重大さに目覚め、仕方なく対応するようである。

本年(2008年)1月25日の産経ニュースによると、

『教授は公に認められている正規の学位と思い込んでいたという。九産大は「博士号は教授採用の必須要件でないが、学位に関する認識が甘かった」とした上で、教授に今後、この博士号を一切使わないよう厳重注意した』

とマスコミを通じて謝罪することになる。

http://sankei.jp.msn.com/life/education/080125/edc0801252237002-n1.htm

これで一件落着したように見えるかもしれないが、

悪かったのは教授だけなのか?との疑問が残り、何か釈然としないものを感じる。

教授の言い分は、「公に認められている正規の学位と思い込んでいた」と言い、

大学の言い分は、「博士号は教授採用の必須要件でない」と言う。

つまり、どちらも悪くない、むしろ被害者、と言わんばかりである。

これが、大学人としての大学当局および教授の、ニセ学位問題に対する認識なのであろうか。

ニセ博士の教授は主要新聞や週刊誌の報道で叩かれ、一定の社会的制裁を受けると共に、

大学からは「今後、この博士号を一切使わないよう」にとの厳重注意の懲戒処分を受ける。

ところが、懲戒処分を言い渡した大学当局(学長)は、何の責任もとってはいない。

学部教授や大学院教授の採用・昇任の実質的権限は、各学部や各大学院研究科にあるから、学長には直接の責任は及ばない、との見方もあるかもしれない。

しかし、問題の教授が無役の平教授ではなく、学部長や大学院研究科長の役職者であった場合には、役職者は学長直属の大学執行部のメンバーであり、執行部の長であり任命権者としての学長の責任は免れることはできないであろう。

若し、学長が、疑わしい博士号を有する教授であることを知りながら、これらの要職を任命していたとすれば、もはや弁解の余地はないであろう。

九州産業大学の場合、大学当局が問題の教授が疑わしい博士号を有していた事実を数年も前から知っていたことを窺わせる疑惑が大学のホームページに掲載されている。

その疑いを示唆する内容は、大学が大学基準協会に提出した申請書類の中に見られる。

大学基準協会から相互評価認定を取得した後の、平成18年度自己点検・評価報告書には、秋山哲男教授の最終学歴及び学位称号欄には、

「クレイトン大学大学院経営学研究科経営学専攻博士課程単位取得終了 Ph.D.(経営学)」

と記載されているのに、

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/info/hyouka/h18/c/04_02_02.pdf (69ページ)

大学基準協会へ認定審査のために提出した、平成16年度自己点検・評価報告書には、

「茨城大学教育学部卒業」

とのみ記載され、クレイトン大学大学院の学歴と博士号は記載されていない。

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/info/hyouka/h16/c/04_02_02.pdf (74ページ)

これだけでは疑惑の証明にはならない。

大学基準協会への認定審査の申請をした前年の、平成15年度の報告書にクレイトン大学博士号の記載がなければ、削除したことにならないからである。

調べていただいたところ、平成15年度版(62ページ)には、

「クレイトン大学大学院経営学研究科博士課程単位取得満期退学 Ph.D.」

と、多少表現は異なるものの平成18年度版とほぼ同じ記載があるという。

こうゆう書類で単なる誤植ということもないだろうから、九産大当局は秋山哲男教授のクレイトン大学博士号が非公認学位であることを認識していて、相互評価認定を取得するにあたり障碍になると見做し、認定審査のため大学基準協会へ提出した平成16年度 自己点検・評価報告書では削除していた疑いが濃くなろう。

週間現代01/26号の記事、「ニセ博士疑惑・現職大学教授25人の実名と言い訳」のなかで、九産大の秋山哲男教授のみが唯一『週1回の論文指導、3年で論文提出。雑誌記事を見て、もっとも信頼できそうなので入学した(大学が代理回答)』と、本人のコメントでなく”大学が言い訳を代弁”しているというのも随分と奇妙な話である。

九産大のサイトには、大学ニュース欄に2008年1月25日付けで「新商学部長と新大学院商学研究科長の決定について」と言うのが出ているだけで、この件に関しての説明等は一切無い様である。

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/news_backnumber.php

大学には学術研究と教育の最高機関としての社会性というのがあるのだろうし、私学と言えどもそれなりの公的資金(皆の税金)が投資されている所以でもあろう。

九産大・造形短大を運営する中村産業学園には、H18年度で国庫等公的補助金は11億5900万円ほどだろうか。

http://www.ip.kyusan-u.ac.jp/gaiyo/pdf/h18pdf/h18_syushi_shikin.pdf

九産大当局が若しニセ博士と知っていて、問題の教授を商学部長兼研究科長に任命していいたとすれば、大学の信用を大きく損なう不正行為であり、その社会的責任は大きい。

説明が要るところであろう。

学位の発行機関である大学は、学位問題については、自ら厳しく律してこそ最高学府の大学であり、運営の健全さと透明性を堅持してこそ末永く大学であり得るということだろうが。