ディプロマミル問題の権威である、静岡県立大学小島茂教授の「学歴汚染(ディプロマミル=Diploma Mill=米国型学位商法による被害、弊害)」サイトに、『米国で犬のMBA第一号誕生』との面白い記事が先日載っていた。

http://degreemill.exblog.jp/10262223/

バーモント州在住の忠犬チェスター君は、その”人生経験”を評価されて、「Rochville University」から、オンライン教育によるMBA (Masters in Business Administration)を授与されている。

尤も、認定もされておらず何所にあるのかすら定かでない国際的な”大学”の、パチモン学位であるから、”忠犬パチ公”物語に終ったが。

YouTubeを眺めると他にも”学位犬”がいるようだ。

これはオーストラリアのTV番組だそうだが、忠犬Sonny君が、これも”人生経験”を評価されて、オンライン教育の「Ashwood University」から”medical degreeー医療系学位”を取得している。

舐めて何でも治す、という医療への熱意ある姿勢が高く評価されたものだろう。

”ペットの学位”のはしりは、2004年にコルビー・ノーラン君(Colby Nolan)と言う6歳の家ネコが、「Trinity Southern University」のMBAを見事取得したのが最初だろうか。

この先進的な未来型インターネット”大学”は残念ながら、ネコの関係者が居たペンシルベニア州司法当局より告訴され、現在は無くなってしまったようだ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Colby_Nolan

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家族の一員であろう犬ネコにも学位とは、イオンドが言うように『教育は、政府や法律によって規制されてはならない』、『学位の評価は、各大学や企業や受章者個人が自由に判断すればよいこと』、”米国では政府は教育に介入しません”という米国の教育の自由がここまで進んでいるかと感慨無量なものがあるが。

下のTVニュースの、「St.Regis University」というのは、犬ネコに学位を発行する迄には至らなかったようだが。

シアトルの東方300マイル程にあるスポケーン市にあったそうだが、2005年8月に連邦捜査当局(USシークレット・サービス、IRS他)の「手入れ」を受け、連邦法違反(Violations of Title 18 of the United States CodeーWire Fraud and Mail Fraud )で起訴されてその判決が下ったという2008年7月のスポケーンTV局のニュースのようだ。

大学はDexieと言う御かみさんが”総長”で、娘や旦那などが電話係や人生経験の評価、学位記・成績証明書の印刷等手分けして行なうという、親族を主とする教授会と理事会による運営だったようだ。

”高等学校”も併設し、”リベリア国政府の公認大学”を謳い、別名での大学多数も抱えて、高校から医療系学位、博士号迄、出した学位が1万件、$6Mとか$7.3Mとかの売り上げとか言うから相当手広く事業を行なっていたようだ。

実際官庁などでこのニセ学位を用いて昇進・昇給した者がかなりおり、問題になっていた。

”総長”が懲役3年。

娘が懲役1年。

等、実刑判決が下っている。

TVインタビューに出ている、イリノイ大学のジョージ・ゴリン教授のコメントのように連邦刑法の適用というのは、画期的なことだろう。

こうゆう摘発が出れば、同業者にも緊張が走り、よい警告となるのだろう。

日本では、法曹、マスコミ、大学の教授の方々などがディプロマミルの社会的な危険性について警鐘を鳴らし、民間ベースで闘っておられるが、社会の治安秩序を担う官のほうは、「見て見ぬふり」と言うわけではないのだろうが、「野放し」の状態であり、ディプロマミルが公然と相手を侮辱・名誉毀損している有様(http://iond-univ.org/crime4.html)なのはどうしたものか。

<追記>

注1:

忠犬チェスター君の経営学修士(Rochville University MBA)は、ドバイから郵送されて来たという。

http://en.wikipedia.org/wiki/Rochville_University

2005年にCNNがディプロマミル番組のため、仮名で入手した同大学の”学位”もUAE(アラブ首長国連邦。最大の都市はドバイ)より郵送されて来たとあるから、UAEになにかあるのだろうか。ウエブサイトはフロリダで運営されているのだともある。

「Rochville University」のサイトを見ると、認定団体だと言う「BOUA」や「UCOEA」より認定を受けている事が書かれているが、これらの団体はいずれも米連邦教育省に公認された認定団体ではなく、自身がデッチ上げたもの。

http://www.rochvilleuniversity.org/

マスター・コースが、「$199 x 65 (credit hours) = $12,935」などと、もっともらしくサイトには書かれているが、実際には料金はこちらになる。

http://www.affordabledegrees.com/?source=Adwords-US&kw=Rochville%20university

注2:

忠犬ソニー君の「Ashwood University」の学位記は、パキスタンから送られてきたという。

「Rochville University」、「Ashwood University」も同じ者による運営だとも言う。

http://en.wikipedia.org/wiki/Ashwood_University

同大学のサイトを眺めると、「No Need to Take Admission Exams, No Need To Study, Receive a College Degree for What You Already Know!」などとあり、「我々は、彼がどこで勉強したかを問題にしない。 現実に彼が何を知っているかが問題である」と言った感じで、「個人に光をあてる”評価”する教育」というところだろうか、真に夢の高等教育コース。

「WOEAC」「BOUA」と称する認定団体から認定を受けているとしてるが、これらの認定団体がそもそも認定されていない罠はここも同じ。

http://ope.ed.gov/accreditation/Search.aspx

自分の専攻希望学科が見当たらない場合は、申し込み時に希望を入力してくれれば新設して15日以内に学位を発送するとあるから、これはもう夢の総合大学。 日本刀学科、ユーフォロジー学科、超能力学科、心霊現象学科、超考古学科、 超常現象学科、超科学科、美容心理学科、などと言ったところは入力することになるだろうか。

料金はここを「クリック」と、こちらは極めてストレートである。

http://www.ashwooduniversity.net/

注3:

ペンシルベニア州司法副長官の修士猫コルビー君の、「Trinity Southern University」というのはテキサス州に在ったそうだが、コルビー君の地元の州司法当局より告訴されると共に、同大学が所在するテキサス州司法当局よりも司法措置を受けて、廃校となっっている。

州の司法管轄範囲は当該州内での活動に限られてしまうのだろうが、ネコでも学位授与!とのあまりに酷い事実に、ディプロマミルが所在したテキサス州との連携も上手くいったものであろう。 猫パンチおそるべし。

注4:

「St.Regis University」の社長のSteve(旦那)のほうの判決はどうだったか調べてみると、連邦司法省の報道発表資料があった。

こちらのほうが、やはり詳しく出ている。

http://www.usdoj.gov/usao/wae/press_releases/2008/docs/080508_Randock_Sentence.pdf

Steven Karl Randock, Sr.(旦那)は懲役3年。出所後の観察3年。

とあり、これはDixie(御かみさん-大学総長)も同じ。

Dixie Ellen Randock 懲役3年。出所後の観察3年。

娘のHeidi Kae Lorhanは、正確には懲役1年と1日。出所後の観察2年。

等となっている。

リベリアの政府役人を買収して、「リベリア国公認大学」と称していたようだ。

高校から複数の大学まで手広く学位を発行し、$6,282,679ドルの売り上げだったという。

不動産や銀行預金を肥やしていたようで、愛車はジャガーXK8。

このニセ学位の購入者は9,612人とされるが、中にはチラホラ日本人の名前もあるようだ。

http://www.spokesmanreview.com/data/diploma-mill/

シークレット・サービスと聞くと、大統領の警護役を思い浮かべるが、有価証券の偽造など連邦規模での犯罪の捜査も仕事である。IRS(米の国税局-歳入庁)も加わっているのは、こうゆう犯罪の場合は必ずと言ってよいほど脱税のケースが考えられるからであろう。

連邦司法省の発表文中にある次の言葉は、洋の東西を問わず、良識人ならば誰でも大いに共感するところであろう。

「Diploma mills pose a threat to the integrity of our educational system. They devalue education by making it difficult to distinguish between a legitimate and a fraudulent degree. They are unfair to those throughout the world who work long and hard for a legitimate degree.」

犬猫こそ使わなかったが、”米国査証を得ようとしているシリアの元軍人”になりすました捜査員が実際に”学位”を取得し、所謂囮捜査でこの”大学”の実態を把握している。

博士号や修士号等、申し込み者の”学位評価”を行なっていたのはHeidi Lorhan(Dixie”総長”の娘)だったそうだが、彼女の学歴は高校中退だった、というのは泣かせる。http://www.hep.uiuc.edu/home/g-gollin/pigeons/USA_press_release.htm

連邦刑務所の収監者データを眺めると、「HEIDI KAE LORHAN 11283-085」は1年と1日の務めを無事終えてこの夏出所しているようである。  ”総長”のママらは未だ暫らくお務めが残っているようであるが。 http://www.bop.gov/iloc2/LocateInmate.jsp

現在は保護観察下と思われるが、塀の中で頭もよく冷えたことであろうし、大学などを偽装してニセ学位を売るなどと言う、黒い誘惑にはもう惑わされる事無く、 今後の人生を明るく生きてほしいものである。