大きな地震があったり津波が襲来したり、地方選挙があったりと忙しなく時は過ぎて行くが、時間が過ぎたからと言って小泉町長の米国学歴に関する疑惑・疑問が自然に解明するというものでもない。
石川県志賀町長の小泉勝氏が米国短大留学で取得したと主張する学位は「応用美術准学士(Associate of Applied Arts)」であるが、准学士の学位のなかで「Applied~」と付く学位というのは、実務に即したより職業実践的な面に重点を置いた課程になると言う(注)。
短大卒業後に4年生大学へ編入するようなことはあまり考慮せず、卒業後は社会に出て即実戦力となることを目指す学科ということになる。
では、小泉氏が米国ウッド短期大学を卒業し取得したのだと言う、「応用美術准学士」学位が果たして米国社会で通用するものなのか否かを考察してみよう。
米国の民間会社が、応用美術関係の基礎知識を持つ初級レベルの人を採用したいとしよう。
事業拡張のため、当社の○○部門で働く応用美術関係の基礎的知識を有する意欲ある人材を求むとして、エントリー・レベルであるから実務経験は問わず、採用必要条件は「応用美術准学士」を最低有する事のみである。
労働力の流動性が高く、生涯一つの会社で働く例は極めて稀だと言われる米国では、人は常により良い職位を求めているのであろう、会社の採用の有無に関わらず履歴書が常に送付されて来ることが多い。 ネット等で募集を公示すれば更に応募の履歴書が殺到するだろうか。
履歴書に卒業証書のコピーや表彰状のコピー、推薦状などが添付されていることもあるが、学歴・学位については履歴書に書いてあることなので卒業証書のコピーは会社として特別必要なことは無い。 勿論色々なコピーを添付しても違法ということではないので、なかには卒業式のプログラムのコピーなどを添付する人もいるだろうか。
集まった履歴書や、会社によっては所定の応募用紙の中から、「応用美術准学士」の学位を保有する者を選別し、雇用の機会均等を謳う法に抵触することの無い様、人種は勿論、男女や年齢による差別や差別の疑いが生じないよう注意しながら、面接などで更に採用予定者を絞り込むことになるだろうか。
採用予定者に(或いは採用後の試用期間中に)、成績証明書の提出を求め、取得学位や専攻履修科目などを確認することになる。
「応用美術」と言っても、物のデザインのようなことから、グラフィック・デザイン、写真など案外幅広いようであり、実際どんなことを専攻してきたのか採用側として知る必要もあるだろう。
さて、ミスター・コイズミも見事採用予定者になり、本人の成績証明書(注)の提出を会社は受けたとしよう。
ここで、「なんだ、こりゃ?」と言う事になる。
「応用美術准学士」の筈であるのだが、応用美術関係の専攻科目の履修が皆無なのである。
だいいち、「応用美術准学士」の学位授与の記載が成績証明書に無い。
成績証明書を縦にしても横にしても、「応用美術准学士」という根拠は出てこないと言う事になる。
これでは採用要件を満たさないので採用は出来ないし、採用後であれば、称した学位には根拠の無い虚偽の学歴ということで解雇ということになるだろう。